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おめでとう。

と言う言葉で、この状況を形容されるのは、何となく気分が悪かった。

壁に吊された部下、シルヴァの透き通るように白い裸体は、欲情を煽ることなどなく、

むしろその光景は、あの雨の日の忌まわしい思い出を蘇らせた。

ブラッドは、固く唇を結んだ。

「ブライト、こんなことしてる場合じゃねえ。雨にうたれて肉が腐った連中が、大勢…」

「どうしたブラッド。今さら怖気づいたのか?

シルヴァの身体を使って、妹を甦らせることに…。」

沈黙。

「─違う。…違う…ただ、お前も見ただろ?このままでは、グレストは滅んじまう。」

そう言うと、ブライトはせせら笑った。

「やはり、最後の涙を私が回収に行って良かった。

お前じゃ、シルヴァを連れて来るどころか、女神フレイアの牙の餌食になっていただろうな。」

「ブライト、」

「いい加減にしろ、ブラッド。

一体私たちが、何のために長い年月をかけて女神の涙の在処を探し、わざわざ回収に出かけ、翻弄したと思う?

…思い出せよ、ブラッド。

お前は妹を生き返らせる。

私はグレスティアと契約し、グレストを安泰へ導く。

そのためだろう?ん?

確かに私は、人々に平和をもたらそうと誓った。だがな、それは今じゃあない…」