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闇の中に浮かび上がるのは、乙女の真白い肢体。

その裸体はまるで光を纏っているかのごとく、ぼうっと暗闇の中で薄ら輝きながら、

磔刑に処せられた罪人のように壁に磔(はりつけ)にされていた。

全くもって良い眺めだ。

裸に剥いて、吊したシルヴァの肢体を眺めながら、男は上機嫌で真っ赤な酒を口に運んだ。

薄暗い国務長官室には、どんよりと甘ったるいような、それでいて酷く鋭敏なような、そんな空気が満ちている。

部屋の中央に取り付けた台座の上に5つ穿たれた穴の中には、遂に手に入れた全ての女神の涙が鎮座し、

娘の呼吸に応じるように、ゆっくりと点滅しながら淡い光を放っている。

かつて味わったことのない最高の高揚感に全身を満たされ、ブライトはこみあげてくる笑いの衝動を抑えることができなかった。

電話が鳴った。

「こちらブライト─何?王子が死にそうだって?あー分かった、すぐに向かおう。」

始終にやにやと笑いながら受け答えする。

彼の弟である、次期グレスト国王がどうなろうと、ブライトは一向に構わなかった。

何故なら───

「ブライト!」

バタバタと騒々しい足音を立てて部屋に傾れ込んで来たのは、彼の部下、ブラッド。

ブライトは受話器を置いた。

薄暗い部屋では、ブラッドの紅い瞳は幻想的なほど鮮やかに光る。

額には、汗が浮かんでいた。

「待ってたぞ、ブラッド。おめでとう。いよいよだな。」

そう言ってやれば、部下の顔は幸福感と罪悪感で醜く歪んだ。