ローラ城北の、最も高い部屋。

軍服の若い女は丁重にドアをノックし、鉄のシェルターのように厚く冷たいドアを押し開けた。

いつ入っても、この部屋は暗い。

憂鬱が、身体中に染み込んでくるようだとジェシカは思った。

「ローラ軍隊長ジェシカ、ただいま帰りました。バルベール様。」

ローラ王国王子、バルベールは、無気力な瞳を日の暮れかかった外に向けていた。

淡いブルーの瞳はくすみ、もはや何も見てはいない。

「本日は、無礼者を1人逮捕いたしました。以上でございます。…失礼致します。」

敬礼をして、ジェシカは踵をかえした。

耳飾りのガラス鈴がりん。と涼やかな音を立てる。