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力を入れた両の掌の中で喘いでいた銀髪の娘は、しばらく藻掻いていたが、やがて動かなくなった。

ブライトはだらりと力が抜けた娘の体を担ぎ上げ、元来た道を引き返そうと踵を返す。

触れただけで、その器には大いなる不安や悲しみが満ちていることが分かった。

火の女神フレイアの眼球を抉って取り出した最後の女神の涙も、今この掌に収まっている。

何もかも、計画通りに。

「ま……テ、」

死にかけのドラゴンが呻いているが、ブライトは気にもせずに歩みを進める。

元々しぶとい連中だ。あの程度の傷で死にはしないだろう。

背後からフレイアが放った火の玉が飛来し、短く切りそろえた髪を掠めて焼いていった。

だが、それでも男は歩みを止めない。

女神の涙がじんと熱を帯びているのを感じて、その顔にはみるみると滲むように恐ろしい笑みが広がった。

もうすぐ、夢が叶うのだ。

そして、もうすぐ終わるのだ。

長きに渡り味わい続けた、苦き屈辱の時が───