──っいやああああああ!!!!

自分の悲鳴が、どこか遠くで聞こえる。

それはぐわんぐわんと頭蓋骨の内側で響いて、思考回路をことごとく断ち切って行く。

腰が砕けて、動くことができなかった。

「うぅ…シ、ルヴァ…逃げ、」

男はつかつかと苦しげに呻くフレイアに歩み寄ると、手にした銀のナイフを彼女の澄んだ美しい瞳に突き刺した。

絶叫、絶叫、絶叫───。

重なる咆哮はもはや、誰の叫び声なのかも分からない。

分からない。
分かりたくない。

─限界だ。

フレイアの目を塗り潰すように溢れる赤色を見ながら、不意に、そう思った。

ゆっくりと、男が振り返る。

その顔には満面の笑顔。

「私が、次の王になるんだよ。シルヴァ…」

お前は、その為の「器」だ───

血に濡れた大きな掌が、こちらに差しのべられて、私の首を握る。

震える手でささやかな抵抗をしたような気がするが、それも恐怖で全く上手く行かなくて、直ぐに息が苦しくなった。

首の後ろから脳天までが凄まじい力で圧迫されているように、早鐘を打つ心臓の鼓動に合わせて激しい鈍痛を訴える。

苦しい。

死ぬかもしれないと言う実感が急に襲って来て、必死にもがいたけれど、

大人の男の前ではその抵抗も大した役に立たず、

ある時不意に、スイッチを切ったように一切が、暗闇に沈んだ。