「島の者はどうなったのじゃ、ナグラ。」

「若い者は私の様に島より飛び去り、何人かは生きのびたようですが、後は…」

「うむ、分かった。」

フレイアはゆっくりと考え込むように目を伏せると、息をついた。

「…ナグラよ。わらわはシルヴァと共に首都グレストに飛ぶ。

お主はデダを封印する手筈を調えよ。

シルヴァ、最後の女神の涙は確かにこのフレイアが持っておる。

「次なる王」の元へ共に向かおうぞ。」

ぬしは今、ひとりにならん方が良い。

フレイアはそう言って笑った。

酷くぎこちない笑顔だったけれど、それは、焼け焦げた荒野に咲いた一輪の小さな花のように、私の心を少しだけ和ませてくれた。

「ナグラ、先に立っておれ。時間がない。お主は何とかしてデダを食い止めるのじゃ。

一刻も早く女神の涙を揃えて、グレスティア様を喚ばねば。」

「御意。」

青年は、再び小柄な青い竜に姿を変えると、曇りがちになってきた空へと飛び立った。

円を描いて上昇し、十分な高さまで昇ると、彼は放たれた矢のように、海と空の境界線が見える場所へ向かって飛び出して行った。