「………誰か、いるのか。」

ふと、気配を感じた。

見回してみるが、人間どころか生き物すらいそうには見えない。

その時、潰れて形を残したまま灰と化していた小さな家の瓦礫の下から、煤にまみれ、血の気が失せて真っ白な顔をした娘が、2人、3人と這い出して来た。

ふらふらと足取りも重く、目がすっかり泳いでしまっている。

結局、瓦礫の下からは、5人の娘が出てきた。

「おい、大丈夫か。」

ブラッドはすぐに駆け寄ると、今にも倒れそうな娘の腕を掴んだ。

娘は、そうされるまでブラッドの存在に気がつかなかったらしく、ひっ。と小さく叫んで、大げさなほどに驚いた。

「国家警察の者だ。良く頑張ったな。歩けるか。」

「…ヴァ様?」

「ん、」

「イ、ヴァ…様…は?」

灼熱に喉を焼かれたようで、娘の声は痛ましいものに変わってしまっていた。

かすれて、良く聞き取れない。

雨が降りしきる中、ブラッドは状態が悪い娘からひとりずつ、熱が落ち着いている森の中に運び、

非常用に常備していた水を、わずかずつだが全員に飲ませてやった。

やはり先ほど話し掛けた娘が最も症状が悪く、水を飲ませると酷く痛がり、吐き出してしまった。

彼女の背中をさすってやりながら、ブラッドは携帯で緊急援助要請シグナルを送り続ける。

塵の為か、電波はなかなか繋がらない。

服はすっかり濡れそぼって膨れ上がり、肌に張りつく。邪魔なので上は脱ぎ捨ててしまう。

前髪をかきあげる。生ぬるい雨は気持ちが悪い。

「…私たち、生きてますね。」

一番最後に、手を引いて連れて来た娘が口を開いた。

体調は5人の中でもましな方だったが、やはりその瞳はぼんやりと宙を彷徨っているようだった。

「イヴァ様の結界に、守られたんですね。」

唇から零れるそれは、悲しい悲しい物語。

「イヴァ様は、どこにいらっしゃるんでしょう。ガーディアナは、どこにあるんですか。」

ブラッドは、言葉を失った。