カチャカチャと言う冷たい音の合間に、1人、また1人と客は逃げ、

小さな古い酒場の中にはあっという間に私と、ブラッドしかいなくなってしまった。

彼女は、不意にこちらを向いた。

グリーンの瞳は涼やかで、以外にも、冷静に凪いでいた。

ブロンドの髪に花びらのように形のよい唇、美人だった。

「…見ない顔だな。よそ者か。」

女は言った。

冷ややかな声だ。

首をかしげると、彼女のガラスの耳飾りがチリチリとなった。

「……ぁ、えーと…」

返答に困る。

何せ私は、自分を証明するための情報を何一つ持ち合わせていないのだ。

「国家警察、シオナだ。」

ブラッドが答えた。

女は冷たい表情を変えなかった。

「…余計なことはせず、早く立ち去ることだ。この男のようになりたくなければな。」

そう言い残し、彼女は意識のない男を引きずって酒場を後にした。

静寂が、よみがえった。

「ブラッドさん、あの人は…」

「この国の軍隊の長、ジェシカ。」

ったく、陰気くせぇ国。

ブラッドは呟いた。