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「女でも子供でも構わん!

そもそもガーディアナにはほとんど女しかいないんだ!

そんなことは最初から分かり切っているだろうが!

つべこべ言わずに戦える者は皆集めろ、私が指揮を取る!」

小さなリビングでグレスト創世記を読んでいたシルヴァは、奥の書斎から聞こえて来た怒鳴り声に顔を上げた。

電話だろうか。

イヴァはいつになく機嫌が悪いようだった。

くわばらくわばら…

しばらくは関わらないようにしようと心に決めて、私は(大して頭に入っては来ないのだが…)辞書のように分厚い創世記を見つめていた。

しばらくすると、嵐のような騒ぎは収まったようで、心なしかうなだれたようなイヴァが書斎から出てきた。

力なく私の向かい側の椅子に座りこむと、見計らったようにキッチンでポットのお湯が沸いて、可愛らしく笛の音を鳴らした。

紅茶でも入れるつもりだろうか。

勝手にお湯が沸いたのは、彼女の魔法が成せる技だ。

こんなふとした時に、何となく彼女は私とは違うと言うことを感じてしまう。

「…おい。」

声をかけられて、私は半ば張りつくように眺めていた創世記から顔を上げた。

「何でしょう。」

「…少し、話したいことがある。」

こちらへ来いと、小さく手招きされて、私はイヴァと向かい合う形でテーブルに着いた。

以前、この上を埋め尽くしていた本達は、だいぶ片付けられたようだった。

話は、唐突に始まった。

「今日…あと数時間後にこの街は空襲を受ける。

お前はこの街を出て、北の港町プロヌへ向かえ。

そこから、できるだけ急いで竜の島ガガナへ渡るんだ。そこに…」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」