***

「兄さん、あんた一体何を考えているんだ!!!」

冷たい室内の壁と言う壁を、激昂した男の叫び声が殴り付けた。

弟に頬を張られたリヴェルは、苦痛に顔を歪めながらも、怒鳴り返すようなことはしなかった。

だが、それがかえって彼の弟バサナの怒りを煽ってしまったようであった。

「今さら戦争を止めるなんて、ふざけるにも程があるぞ!」

目は血走り、拳は震えている。あらぶる弟に対して、兄は平生の冷静さを保っていた。

「戦争以外に、僕たちの民を救う方法があるはずだよ。バサナ。頼む、議会を収集してくれ。」

「議会なんて、どこにあるって言うんだ!?みんな殺されたさ!国民の暴動で!」

「分かってくれ、バサナ。お前なら、分かるはずだよ。」

「あんたは家族がいないから分からないんだよ!リヴェル!これ以上待てない!!」

「バサナ。」

「死んじまうんだよ!俺の息子が!妻が!腹を減らしてるんだ!兄さんには守るべき人がいないからそんなことが言えるんだろ!」

「…いるさ。だから、今お前にこうして話している。」

「…何、だと?」

「ガーディアナに、いるんだ。死なせたくない人が。」

白熱していた空気が、恐ろしい程不穏な静寂に包まれて氷つく。

時が、止まった。

「裏切るのか。あんたの、身勝手で、民を殺すのか。俺の家族を、飢え死にさせるのか!」

「…っ、それは、ちがう…」

「どう違うんだよお!!ふざけるなああぁっ!!!」

血を吐くような咆哮は、窓を破らんばかりに轟く。