不満がっていると、ブラッドは私をなだめるかのようにつけ加えて来た。

「理由はもうひとつある。グレストには今、王がいないだろ。」

「はい。」

「俺たちの上司、グレスト国家警察国務長官…まあ、警察のトップに「ブライト」と言う男がいるんだが、

密かに、新政府の間でそいつの弟君が次のグレスト国王に就任することに決まったんだ。」

「ブラッドさんの上司の弟さん…ですか。またいまいちぴんと来ない人を…」

ぶつくさ言うのを軽く無視して、ブラッドは続ける。

「一度グレスト王国は解体したか手前、また統一するには色々と面倒がかかる。

だから、グレスティアに新国王の任命を頼む。」

ん?
こんがらがって来た…

うぅむと唸る。

「女神が、その…ブライトさんの弟をグレストの王様に指名する程度で、

皆さん納得して「色々な面倒」がなくなるんですか?」

「さあな。俺には分からねえ。

ただ、元々このグレスト王国は、ブライトのご先祖さんが大女神グレスティアに与えられた国らしい。

だから、同じことをもう一度やってもらうんだと。

まあいわゆる儀式ってやつだな。」

「ブラッドさん…あなたこそ、そんな理由で良く仕事してられますね…」

「何言ってやがる。お前も知ってんだろ。

このまんまだと、伝説では近いうちにこの世界終わるんだぞ。」

「はぁ…」

「お前、ラジオで言ってたことは信じるのに、伝説は信じてねえのか。」