「はぁっ、ったく寒ぃな。」

どさり、と小ぶりなテーブルを挟んで、向かい合った木の椅子に座り、ブラッドは目で私に座れと言った。

広場を離れ、私達は寒さをしのぐために小さな酒場にいた。

「で、どう思う。」

「はい?」

「この町に来てみて、どう思う。」

「どうって…」

彼の質問の意図が見えない。

初めての任務だ。

ブラッドがどういうどういう回答を望んでいるのかはっきりわからない以上、不用意なことは言いたくなかった。

まだ無能のレッテルは貼られたくない。

ただ、一つだけ言えることあるとすれば、この街は非常に陰鬱な感じがするということ。

酒場は暖かく、昼間にも関わらず男女数人の客がいる。

しかし、彼らが楽しく酒を汲み交わし、笑うことはない。

皆、生きることに疲れたようにぼんやりとした目で、黙々と酒のグラスを口に運んでいる。

店を包む空気は冷ややかだった。

「…事前調査だと、この町は5年間春が来てねぇ。お前はこれを異常気象だと思うか。」

「はぁ…」

何とも言えませんね。

私は小さく答えた。

でも、実際それ以外に何が考えられるだろう?

すかさずブラッドの眉が寄り、ふーっと大きなため息が響いた。

「お前、本当に何にも調べて来てねえんだな。」

「……は?」

「これが異常気象に見えんのかよ。」