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人間、覗くなと言われれば覗きたくなるもの。

しばらく本が積み上げられた部屋をうろうろしていたシルヴァだったが、

ついに、イヴァの書斎をたった一枚隔てているだけの、古びた木の扉に手をかけた。

一瞬、ぴりりと静電気のような刺激を感じたが、別段気にも止めずにそっと中を覗きこむ。

(うわぁ……)

イヴァの書斎。

そこにもまた、先ほどの部屋と同じように、数多の本が、吹き抜けのように高くなった天井に向かって騒然と並べられていた。

床には、足の踏み場も見当たらないほどに、本や、書き損じてくしゃりと丸められた紙くずで埋め尽くされている。

室内は薄暗い。

しかし、イヴァがいつも書き物をしているのであろう部屋の奥の、

古めかしいデスクの周りにいくつか漂っている青白い石のようなものが、

ぼんやりと部屋の輪郭を写し出していた。

ふわふわと、宙に浮かぶ水晶のかけらのような、それ。

シルヴァは慎重に部屋の中へと踏み込むと、ゆっくりとイヴァのデスクへと近づいて行った。

少しの罪悪感と緊張が、心地よい快楽となって全身を巡る。

(あんな態度とられたんだもん。この位…)

どうってことない。

自分自身にそう言い聞かせると、

シルヴァは好奇心の赴くままに、魅惑的にひっそりと光を纏うその結晶に手をかけた。

途端。

「きゃ…」

ぞくりと、痛みだか寒気だかよくわからないものが身体を貫いて。

意識が、

黒く染まった。