「…イヴァさん、」

「もう遊戯は終わりだ。待っていろ。焦らずとも、女神の涙など…あんなもの、今すぐくれてやるわ。」

「人間が、嫌いですか。」

空気が、徐々に凍って行く。

だが、これだけはどうしても聞きたかった。

彼女の妙な態度に無性に腹が立ったのだ。

「あぁ、好かんが、それがどうした。」

「あなたも同じ、人間じゃないんですか。」

「同じ人間?」

強がりは、怒りに変わったようだった。

「同じ人間だから、だから何だ。

同じ人間だから、誰も彼も無条件で愛し会えて、分かりあえるとでも言うのか?

馬鹿か貴様は。それならば、なぜ争いなど起こる?

猫や犬は愛せても、人間を愛せない者だっているだろう。

嘘を付き合い、欺き合い、騙し合っておいて何が「同じ人間」だ。

胸くそ悪い。」

「…でも、」

「でも何だ、」

「分かり合えないにしても、人間ってそんなに悪いものですか?」

「智の女神に情けでもかけて欲しいのか?

おお万物の長!世界を統べるべく生まれた選ばれしもの、人間よ!

…笑わせる。それで、この様か。

自然を蹂躙し、破壊し尽くし、自ら災害を招き、なお壊し足らずに互いに殺しあう。

では私も聞くが、人間とはそれほどまでに尊い生き物なのか?」

「………」

「滑稽なことだな。お前の連れのあの男だって、善人面して今にお前を欺くぞ。」

それは、シルヴァに向けられた言葉。

しかし、どことなく自重的だった。

ぎらぎらと、静かに燃える視線が痛い。