あてもなく歩いていると、市街地の外れに出た。木が柵の様に立ち並んでバリケードを作っている。

そこだけが森の様に薄暗くなっていて、そこから先は良く見渡すことができない。

来るときも思ったのだが、なぜガーディアナの町はこれほどまでに外部との接触を拒むのだろう。

守りの呪(まじな)いで幻覚まで見せて。

ブラッドが、首を傾げてみせた、その時。

空気が、変わった。

何か、いる。

かさり。

微かに草がこすれる音に身を翻すと視界に飛び込んで来たのは鋭利な切っ先

走る
びゅんと風を切り裂く音

一瞬前にブラッドの首があった空間をナイフが真っ二つに断った

気配、気配、が、駆ける

五感を研ぎ澄ます

右、

すかさずピストルを抜く
刃が掠める躱す撃つ

まずは、ひとり

後ろから、殺気

振り向きざま、に、撃つ

手応え。

どう、と人が倒れる音が、響く。

静寂───

夕方の空気は、再び穏やかさを取り戻した。

心臓が、まだ走り回っている。ブラッドの額を、じわりと冷や汗が伝って行った。

「な…なんだ、」

そこに倒れていたのは、2人の男だった。

が、彼らが暗殺者か軍人─人をあやめる為の訓練を積んだ者であることは明らかだった。

ひとりの細身の男は既に言切れていたが、もう一人の男は叫び声ひとつ上げずに立ち上がると、ブラッドを一瞥して、走りだした。

すかさず追おうとして、しかし、ブラッドは足を止めた。

目に入ってきたのは、大量の血。
これほどの深手を負ってもなお、声ひとつ漏らさないとは。

間違いない、プロだ。

森へと目をやるが、男の姿は既に跡形もなくなっていた。