ブラッドの後に着いて城下町に入ると、路地にはひとっこひとり見当たらなかった。

木造の、どれもどこかしら古い家屋は皆厚く雪を被り、花壇や可愛らしい鉢には、枯れ果てた植物の死骸が無造作に打ち棄ててある。

やはり、人の気配はない。

しばらく歩くと、開けた広場に出た。

ここにも人の気配はなく、積もった白に残る足跡もほとんどない。

ずる、ずる、真っ白に雪化粧したただっ広い広場を男が一人、花を一杯に積んだ大きなそりを引いて、横切っていた。

「なぁあんた、花でも売ってんのか。」

ブラッドが声をかけると、男はゆっくりと顔を上げた。

彼の目は暗く落ち窪み、瞳には光がない。

「…今朝、妻が、死にましてね。今から埋めに行くんですよ。」

重く沈んだ声には意外にも若々しい張りがあった。

もしかしたら、見た目よりもずっと若いのかも知れない。

そりの上にこんもりと積んである赤や黄の明るい花の色が、じっとりと嫌な後味を残して目に焼きついた。