「…ひでぇな。」

くしゅん。と、顔に似合わず可愛らしいくしゃみをして、遅れて汽車から降りてきたブラッドが呟く。

「あーぁ。」

…寒ぃの、嫌いなんだよなぁ。

一件、ただだるそうな口調には、どこか寂しげな響きが含まれていた。

ブラッドは、やはりだるそうに大きく伸びをすると、どこから出したのか赤いマフラーをして、城下町へと足を進め出す。

「あの…ちょっと……」

ブラッドは止まらない。

「…何なの、あの人。」

面白くない。

先を行くブラッドの背中が小さくなり始める。

「しょうがない…か。」

これは仕事。割りきらなければ。

ため息を一つ、私は渋々、雪上に残る幾回りも大きな足跡を追って歩き始めたのだった。