一瞬だった。

天井から差し込んでいた光が、雨が上がるようにすっと、消えた。

暗黒。

次いで、目の前のものが倒れた音がした。

「!?」

「………どうやら、お喋りが過ぎたようですね。命の光を消されてしまいました。」

「キリュウ…聞いてやがったのか!?おい、しっかりしろ!」

「もう終わりです。私はあの光がないと生きられないのです……でも良かった。生き人形には飽き飽きしていたところでしたから。」
「おい…」


「覚えておいて下さい。

全ての命が思いどうりになるなどと傲慢になるほど、貴方達は万能ではないことを。

私達の気まぐれひとつで貴方達の命などどうにでもなるのですから。」

「………。」

「…私を、……床から抜いて下さい。きっと…少しは貴方のお役に…立てるでしょう。急いで…」

Hannaが、怒りに目覚めてしまいました。

突然、地を揺るがすような地響きが起こった。

激しい縦揺れの後、天井から生えていた巨大な水槽達は次々と倒れ、研究室のあちらこちらに大きな水溜まりを作った。

暗闇の中、倒れた少年はもはや動く気配すら見せない。

ふと、視線を感じて振り返る。

床の至るところに、水槽から出てしまった子供が転がっている。

目を見開いて、あるものは穏やかに微笑んで、

目覚めよ
我らが同胞よ
復讐の時は来たり
はびこる病は
ついに我らが母を
裏切った
覚悟せよ

決別の時
償うが良い

皆、歌っていた。

植物から生まれた─否、生まれさせられた人間。

全身を、悪寒が駆けて行った。ただ歌っているだけ、それだけなのにも関わらず、あまりの威圧感に今にも膝が砕けそうだ。

「…くそっ!」

(一体、誰のせいでこんなことになってんだ!)

ブラッドは、息絶えた少年の身体を、力一杯引いた。
恐らく、唯一残された脱出口が、

ここにある。