呼吸も覚悟も整った。

知らず引き締まった表情のまま、俺は立ち上がって歩き出す。

…しかし。

やはり俺は冷静さを欠いている事には違いなかった。

何故この時、そばにあるドアを見なかったのか。

電子ロックで閉ざされたそのドアには、こんなプレートが貼られていた。



『特殊標本室 関係者以外の入室を禁ず』