「ライブ? 誰の?」 じっとりとした、湿気のある風が、道路の真ん中に立つ、あたし達を包み込む。 「有名じゃねぇから分かんねぇよ」 じゃあ、何でお前が知ってるんだ! とは言えなかった。 あたしの返事を遮るように、また歩きだしたのだった。 ……バンドとか音楽はあんま興味ないのに。 歌うのは好きだけど… 音痴だし。 「……もう」 ムスっとほっぺを膨らましながら空を見上げた。 季節は冬だというのに、じっとりとした空気は梅雨を思わせた。 雨でもふるんだろうか? 雨ふったらやだなぁ……。