トントン


誰かがドアをノックする音がする。


「れんげ、入るよ?」


見えないのをわかっていながら、れんげは無言で後ろを向きながら頷いた。


キィ…とドアの空く音と同時に、リアの顔がゆっくり覗く。


「もう着替えたの。もっと抵抗あると思った。」


すぐさまれんげの前へ駆け寄り、嬉しそうに下から上まで見る。


(なんでこんな楽しそうなんだろう?)


れんげは不思議に思いながら、苦笑いした。


「よく似合うわ。少しの間だけなのがもったいないわね」


「あの、リ」


「あ、これ。後ろリボンついてるのよ」


ささっと後ろに回り手際よく結ぶ。


「リアさん、なん」


「ちょっと待ってて。腕につける木製のバングルがあるの。ちょっとしたときに役立つから」


れんげの言葉は耳に入ってないようだった。


バングルとやらを取りに、ドアも閉めないでまた嬉しそうに走って行った。


唖然と開けっ放しのドアを見るれんげ。


(…何で、うきうきしてるんだろ…。こんな時なのに)


するとドアの向こうに、キアーの姿が見える。


リアが走って行ったほうを見ながら、呟くようにれんげに教えた。