「どんな顔が望みだ?」


 日本で不認可の脂肪吸引術で40代の女性を死亡させ、医師免許を剥奪された元美容整形外科医が尋ねた。


「どんなでもいいから、冷たい感じで頼む。」


 俺が曖昧な言い方をしたのがいけなかった。


 久々に見た鏡には、絵に描いたような美しい顔がうつっていた。


「気に入ったか?」


 男は満足そうに微笑んだ。


「何だよコレ?気持ち悪い…」


 本音だった。


「完璧に整った顔ほど、冷酷に見えるものはない。間違いなくお前のオーダー通りだ。」


 ヤツは言い張った。


 単なるお前の趣味だろーが?


 俺の人生がかかってるってのに、迷惑な話だ。


 とはいえ、童顔で『天使のよう』と言われた以前の俺の面影は、もう微塵も見当たらなかった。