狼執事とお嬢様♡


無意識に零れた言葉。

私は彼の名前を呼んでいたのだ。


久しぶりに見た和哉君は出会ったころと何も変わってはいなかった。



「穂乃歌ー?何か言ったー?」



後ろから聞こえた莉緒の声。

私はポケットに入れていた手を出す。


冷たい風が、少しだけ温まった私の手を冷やす。



『えっと…なんでもないよ?』

「ふーん?」



そう言って誤魔化して、3人の元へと戻った。


でも、私はやっぱり何でも無い訳なくて。



『っ~~!ゴメン!ちょっと私行かなきゃッ…!』

「へッ!?ちょっ、穂乃歌??」


私は、扉に向かって足早に歩いた。


莉緒の声は届いていないように装って。


重いドアは私は両手で押さないと開かなくて。



ギィ…と、重い音が冷たい風を切って鳴る。



『ゴメン!』とだけ言い残して私はその場を立ち去った。




3人に悪いことをしたのは分かっている。

でも、右手に握られた袋を見ると、やっぱり渡したくて。



だからこそ、私の進む道に迷いは無かった。



無駄に長い廊下をさっさと歩くと、私は玄関を飛び出す。

そこからは思い切り走った。