『正直のところ、妊娠していないことがわかって、ホッとした。自分でも嫌になるくらいひどい奴だと思うよ。』
今にも泣きそうな顔で、ボソボソと小さな声で言う夫に、
「私もホッとした。母親失格だよね?
きっと神様が、こんな年寄り夫婦よりも、もっと若くてピチピチの夫婦のところがいいだろうと思ったんだろうね。」
夫はフッと悲しげな笑みを浮かべると、
『そんなこと言ったら、俺も父親失格だ。
恐らく、紗英と亮を元気ないい子に育てろってことなのかもしれないな。』
依然として重苦しい空気は払拭することができなかった。

