しかし、突如それを破る
かのように、男は弥嘉に
穏やかな笑みを浮かべな
がら徐に口を開いた。
「弥嘉、紹介が遅れた。
彼は壱加といって、家の
事情により暫くこちらで
預かることにした。口が
悪くて生意気な奴だが、
仲良くしてやってくれ」
「てめぇ……最後の一言
が余計なんだよっ!!」
「居候が大口を叩くな」
「――黙れオッサン!!」
父親の見事なまでのあし
らい方と壱加の年相応の
膨れ面に、思わず弥嘉に
笑みがこぼれた。
そのやり取りに終止符を
打つかのように、弥嘉は
凛とした声を響かせた。
「分かりましたお父様。
えっと……壱加様、初め
まして弥嘉です。宜しく
お願いします」
そう言うと彼女は姿勢を
正して彼にお辞儀した。


