弥嘉の様子に気が付いて 訝しんだ少年は、早足で 彼女の元に向かうや否や その場に座りこんだ。 「おいアンタ、あんまり ジロジロ見てんなよ!!」 「……ひっ!!」 突然顔を近づけられた上 勢い良く凄まれたため、 弥嘉は思いがけず小さな 悲鳴をあげた。 「壱加、あまり私の娘を 苛めてくれるなよ?」 先程とは打って変わった 厳格な声でそう言うと、 男は鋭い視線を向けた。 それに対して壱加は少し ばかり萎縮したが、すぐ さま負けじと睨み返す。 “一触即発”の雰囲気が 客間全体に広がった。