「――――分かった」
男性は弥嘉に何も聞かず
携帯を取り出した。
暫くしてからA班の責任者
らしき人と繋がり、電話
越しの野太い声が中年の
男性を思わせた。
「佐藤か、どうした?」
「はい。そちらはもう見
つかりましたか?」
「いいや、まだだ。既に
この付近にいないのかも
しれんな……くそっ!!」
苦虫を潰したような顔を
した中年男性を想像しな
がら彼は言葉を続ける。
「……では、先程気分が
優れなかった少女を復帰
させて頂けますか?」
「一体どういう風の吹き
回しだ、佐藤?」
彼の突飛な言い分に中年
男性が思わず訝しんだ。
すると彼は、電話越しに
笑みを浮かべて言った。
「彼女が、彼の居場所を
つかめそうなんですよ」
僅かだが、弥嘉の耳には
中年男性の息を飲む音が
聞こえてきた。


