男は未だ完全に納得して
いない娘に言い聞かせる
ように言葉を発した。
「先の大戦は両者互角の
闘いで終結の目処がたた
ない状態が長く続いた。それから10年程経過した
頃に、ついに両者は停戦
条約を結ぼうとした……
しかし事件が起こった」
「事件、ですか?」
男は静か首を縦に振り、
少しずつ唇を動かした。
「――伝説のドラゴンが
姿を表したんだ」
「伝説の、ドラゴン?」
「そうだ。それによって
戦況は一変し人間が惨敗
した形で幕を下ろした」
「そのドラゴンは、一体
何をしたのですか?」
弥嘉は少し躊躇いながら
男に訊ねてみた。
すると、男はその当時を
思い起こしたのか眉間に
しわを寄せた。
「首都圏であるこの地域
一帯を一瞬で焼け野原に
仕立て上げたんだ」
男はそれを話すや否や、
大粒の涙を浮かべた。


