その瞬間、今まで動かな
かったはずの両足が突然
動くようになった。
それを確認する間もなく
弥嘉の足は勢い良く床を
蹴り上げていた。
「ちょっ……弥嘉!?」
紗奈恵は懸命に声を振り
絞ったが、すでに弥嘉の
耳には届かなかった。
***
弥嘉は人目をはばからず
一心不乱に少女の元へと
走り出した。
少女は特に気にも止めず
“仕事”を続行する。
教室中は未だ阿鼻叫喚で
溢れかえっていた。
『これ以上、誰も連れて
いかせない為にはせめて
あの“双眼鏡”だけでも
壊さなくては!!』
正に少女が双眼鏡で見つ
けた対象者の腕を掴んだ
瞬間、弥嘉は少女の反対
側の手にあった“それ”
を思い切り引ったくる。
そしてすぐさま窓側まで
走って双眼鏡を勢い良く
外へと投げ捨てた。


