『あのさなえちゃんが、
突然椅子から立って声を
荒げるなんて……』


普段はめったに取り乱さ
ない紗奈恵の奇行を見て
弥嘉は慌てふためく。


「あのっ……落ち着いて
くださいね?」

「充分落ち着いてるわ!!
ちゃんと事情を説明して
くれるんでしょうね!?」


紗奈恵は透き通った白い
肌を真っ赤に染め、尚も
声を荒げて弥嘉をまくし
立てていた。


『ち、ちっとも落ち着い
ていませんからぁ!!』


弥嘉は心の中で紗奈恵の
言い分を全面否定した。




     ***




「まさか“帝政律館”が
転校先とはねぇ……確か
国家の直轄校で寮生活が
義務になっている所じゃ
ない。弥嘉はそこで一体
何をするつもりなの?」


ようやく落ち着きを取り
戻した紗奈恵は、冷静な
判断で弥嘉に訊ねた。


「“ある物”を探すため
です。当初は、情報収集
だけならこちらにいても
出来るものと考えていた
のですけれども……」


弥嘉は俯きつつ、守護者
の事には敢えて触れずに
曖昧に答えていた。