花の移り変わりによって
いよいよ緑が深まると、
それまで以上に辺り一帯
が鳥や虫の鳴き声で賑わ
いをみせていた。

また、時折吹き抜ける風
が心地良さとほんの僅か
な湿気を運んでくるため
否が応でも人々に梅雨の
到来を予感させた。




そのような中、昼間にも
かかわらずろくに日の光
が差さないとある一室で
少女は突然狂ったように
声を張り上げた。


「――コレ以上ハ流石ニ
我慢出来ナイヨ!!」


すると、先程まで書き物
に勤しんでいた男は慌て
てボールペンを机の上に
置くなり、必死に少女を
なだめようと試みた。


「待ってくれ、今はまだ
時期じゃない!!もう少し
様子を見てからでも」

「ココニ居タッテ、何モ
変ワラナイジャナイ!!」


片言ながらも鋭さを含む
言葉に、男は思わず口を
閉ざす羽目になった。


「し、しかし……」

「仲間ガ今モ助ケヲ求メ
テル。私行カナクチャ」


そう言い残すと、少女は
男の制止を振り切り勢い
良く扉を開け放った。




――この日を境に世界が
歪んでいくなどと、誰が
想像出来ただろうか――