†Dragon Guardian†


「はは……嘘やんな?」


それでも尚厳しい現実に
抗おうと、都は深く腰掛
けた後些か不自然な笑顔
を貼り付けた。


「あの人、確か定年にな
ってないやんか。ウチは
まだ“あの約束”を果た
してへんよ?」


誰に問うわけでもなく、
都は少しばかり寂しげに
呟くと徐に天を仰いだ。


「………………………」


すると、先程から半ば強
張った綾瀬の頬を不意に
一筋の涙が伝っていく。

その姿をガラス越しに捉
えた瞬間、都の脳裏には
長官との思い出が走馬灯
のように駆け巡った。




――――もうすぐ定年だ
から、それまでは自力で
頑張ろうかしら――――


――――さっきのような
しつこいクレームがたま
にくるけど、そこまで気
に病まないで?――――


――――平気よ。きちん
と薬を貰ったから大分体
が楽になったわ――――


――――あの時とは状況
が違って今は一刻一秒を
争うの!!お願いだから、
早くこの手紙を書いてき
てちょうだい!!――――




「平気やて……心配せん
でも大丈夫やって、どん
だけ他人のことばっかり
考えてんねん!!」


最後まで身を呈した彼女
の生き様をやたらと責め
立てるうちに、都は感極
まって再び泣き崩れた。


「長官さんの、阿呆ぉ」


どこか弱々しくも悲痛な
叫びは、無情にも車内の
闇に儚く散っていった。