このような心情を反映す
るかのように、車内にも
一時は実に和やかな空気
が流れていった。
ところが、他でもない都
の些細な一言によりそれ
は脆くも崩れ去る。
「そや!!さっき言うてた
身代わりって何です?」
当然聞かれるであろう事
とは知りながら、あえて
避けてきたのを蒸し返さ
れたため、綾瀬は思わず
溜め息をついた。
しかしながら、都の好奇
に満ちた視線を感じると
彼は仕方なく徐々に重い
口を開いていった。
「……先程も少し申し上
げましたが、あの会議で
柏木様がお尋ね者でない
ことは既に話されている
はずなのです。それにも
かかわらず、何故これ程
まで追いかけられてきた
のか想像出来ますか?」
「いや、さっぱり」
「――つまり、あなたを
その者に仕立て上げ隣国
に連れて帰ろうとしてい
るのでしょうね」
「なっ……何でやねん!?
おかしいやろ、それ!!」
あまりの不条理さに怒り
を露わにした都に対し、
彼は実に淡々とした口調
で己の推測を述べた。
「おそらく張本人が未だ
見つかっていないからで
しょう。しかしながら、
隣国の世論や国家は早急
な解決、言うなれば隣国
への身柄引き渡しを要求
しています。そこに偶然
現れたのが、容姿の似通
ったあなたです」
「へ!?あ!?ちょっ……」
「では、順を追って説明
させて頂きますね」
今や混乱の渦に陥った都
の声色を聞いて、綾瀬は
先程よりも幾分か丁寧に
話し始めた。


