それから暫くして、綾瀬
は仮眠を取るために一旦
道路の端に車を止めた。
その後尚も眠り続ける都
を確認するなり、綾瀬は
助手席へと移動してゆっ
くり椅子を傾けるとすぐ
さま上に寝転んだ。
車の内側までひだまりに
包まれた頃、突如として
後部座席から異様な音が
響き渡っていった。
ガアァァァァァァァァン
それを耳にするや否や、
彼はつい先程まで倒して
いた座席を急いで起こし
都の方へと振り返った。
「か……柏木様!?」
「ふぁい、綾瀬さん?」
しかしながら、当の本人
は彼の心配をよそに何度
か頭をさすると些か間抜
けな声を出した。
あまりにも緊張感のない
返答に呆れつつ、綾瀬は
徐に口を開いた。
「何か召し上がります?
と言っても、おにぎりと
お茶くらいしかありませ
んけれども……」
「も、もらいますっ!!」
食にありつけると聞いた
途端、都が無駄に元気の
良さを発揮したために、
綾瀬は思わず苦笑した。
「お隣の席の足元にクー
ラーボックスがございま
すから、そこからお好き
な物をお取りください」
すると都は早速言われた
通りに箱を開けて、その
中から明太子のおにぎり
2つと麦茶を取り出し無我
夢中で貪っていった。
「ひふほはひ、ほんはん
ひょうひひはんへふ?」
(いつの間に、こんなん
用意したんです?)
「病院を出た後すぐに、
コンビニで調達して参り
ました。そのため、柏木
様をお迎えするのに少々
お時間を頂きましたが」
もはや諦めの境地に立た
された彼を尻目に、都は
一気にお茶を流し込む。
「なるほど。そう言えば
長官さんの身体は大丈夫
やったんですか?」
「――もしもの場合は、
部下から連絡が入ります
からどうぞご心配なく」
節々に見え隠れする彼の
優しさに、都はまたもや
心の中が温かくなってい
くのを実感していた。


