それでも尚女性は曖昧に
笑うだけで何も答えよう
としなかったため、都は
益々苛立ちを募らせた。
「――そっちがその気な
んやったら、ウチは理由
を聞くまでそんなもんは
書きません!!それに自分
が定年になるまで、傍に
居るって約束しました」
すると女性は途端に血相
を変え、凄まじい勢いで
都をまくし立てた。
「もうあの時とは違って
事は一刻一秒を争うの!!
お願いだから、早くこれ
に書いてちょうだい!!」
その言葉と共に既に判の
つかれた封筒を押し付け
られ、都は憤りのあまり
きつく口を閉ざした。
そうして、暫し部屋中に
重い沈黙が流れたものの
やがてその状況に耐えき
れなくなった都は静かに
言葉を紡いでいった。
「分かりました……一応
書くことは書きますが、
これを自分に渡すかどう
かはウチが決めます」
「ど、どうして!?」
「ウチのためを思って、
そう言ってくれてるのは
分かります。せやけど、
ちゃんとした訳を知らん
まま家に帰るんは嫌なん
です!!これは当事者とし
ての最後の意地です!!」
都はそう言って突き出さ
れた封筒を受け取ると、
イタズラっ子の如く笑み
を浮かべた。
「――あなたも大概ね」
どこか勝ち誇ったような
都の表情を目の当たりに
するなり、女性は思わず
苦笑を漏らした。


