するとその拍子に、女性
の首に潜む紫色の何かが
都の注意を引きつけた。
「もしかして、腫れてる
んちゃいますの?」
都はそう言うと、自身の
首の該当箇所を何度か指
で軽く叩いた。
「ああ、これね。本当は
薬を投与して入院しなく
てはならないらしいのだ
けど、生憎そんな時間は
持ち合わせていないし、
もうすぐ定年だからそれ
までは自力で頑張ろうと
思うの。幸い、変に気を
遣う身内もいないから」
話された内容とは異なる
落ち着き払った様子に、
都は違和感を覚えてふと
言葉を漏らした。
「えっ……どうして?」
「旦那が5年前に亡くなっ
たから、それ以来ずっと
一人で暮らしているの」
どこか遠くを見るような
目で語られた女性の過去
を耳にするなり、都の中
である決意が固まった。
「だったら、ウチが定年
まで傍におります!!」
「優しいのね……その気
持ちだけでも、有り難く
受け取っておくわ」
「それじゃあ、あかんの
です!!助けてもろたから
には恩返しをせんとウチ
の気が済みません!!」
「でも、あれは明らかに
こちら側が引き起こした
重大な過失なのよ?被害
者であるあなたが、そこ
までする必要はないわ」
「そんなことないです!!
あの時に見抜いてくれた
から、ウチは外国とかに
行かんで済んだんです!!
どうか……どうか、力に
ならせてくださいっ!!」
しまいには土下座までも
披露した熱意溢れる都の
説得に、女性は遂に根負
けする羽目になった。
「――じゃあ、お願いし
ても良いかしら?」
その返答を聞くと、都は
ようやく顔を綻ばせた。
――こうして、都と女性
の些か奇妙な同居生活が
幕を開けたのだった――


