†Dragon Guardian†


しかしながら、その重い
空気を振り払うかの如く
壱加は声を発した。


「……所詮は文献上だけ
の話なんだろ!?」


すると徹は、真剣な表情
で彼の正面を見据えた。


「弥嘉が一部でもそれを
見ていたとしたら?」

「――はあっ!?」

「彼女は連行される直前
まで、どうやら橋浪駅の
周辺で弥嘉と一緒にいた
らしいんだ」


思わぬ新事実の発覚に、
壱加は目を大きく見開き
何度かまばたきをした。

それを横目に入れつつ、
徹は尚も話を続けた。


「後日弥嘉からその話を
聞いたというのもあるが
それを裏付けるように、
10月9日の深夜に彼女の名
で捜索願が出されていた
らしい。あと、興味深い
ことがもう一つ」

「……何だよ?」


新たに疑問符を浮かべて
困惑する壱加に対して、
徹は静かに言葉を紡ぐ。




「その日付けの国家側の
記録が何も残されていな
いんだ。地元のニュース
では、不幸な誘拐事件と
して取り上げられたのに
もかかわらず……な」




それがもたらしたあまり
にも大きすぎる衝撃が、
壱加の中で波紋のように
広がり終いには彼から声
を奪っていった。