『艶めく黒のボブに目鼻
立ちが比較的にくっきり
した容貌。それに、やや
つり上がった目……どれ
を取っても都ちゃん似で
すが、この方の瞳は紫の
ようです。確か都ちゃん
は灰色でしたっけ?』


都を彷彿とさせる写真を
眺めながら、弥嘉は既に
殆ど回らないであろう頭
でそう考えていた。


『――まだ、続きがある
みたいですね』


最早、怖いもの見たさの
心境で弥嘉は次のページ
へと視線を落とした。




【エリスさんは、先日の
学生デモを先導したドラ
ゴンで、今回我々の警護
対象となった方だが不法
入国をしたため送還には
裏ルートが使われる可能
性が高いとされていた。
おそらく現在行方不明中
の都さんはそこを通った
とされているが、詳しい
ことは分かっていない】




それを読み終えた途端、
彼女の両眼からは止めど
なく涙が溢れてきた。


『裏ルートということは
正規のものとは異なり、
“命の保障がされない”
ということですよね……
何故何の罪もない彼女が
そんな酷い目に!?』


暫くむせび泣くうちに、
彼女はふとあることに気
が付いた。


『あの時、何があっても
私が都ちゃんを助けてい
たならばこのような事態
には陥らなかったのでは
ないのでしょうか?私が
不甲斐ないばっかりに、
都ちゃん……がぁ!!』


その瞬間、弥嘉の前から
一切の光が失われた。




――そして少女は、深い
闇へと落ちていった――




【Chapter.9 混沌】 完