――それは今からひと月
前の昼下がりのこと――
誘拐未遂事件の翌日から
習慣化した図書館通いが
板についてきた頃、弥嘉
は何気なく館内の地図に
目を留めた。
『……ここに地図なんて
あったでしょうか?』
そう思案しつつ、弥嘉は
壁に掛かった地図に一歩
近づき思わず凝視した。
『第二閲覧室のちょうど
北側に位置する部屋に、
白いテープが貼られてい
ますね。えっと、これは
文字でしょうか?隠れて
てよく見えません』
弥嘉は先程よりもさらに
目を凝らし、テープから
僅かに透けて見える文字
を心の中で読み上げた。
『えっと、き・みつ・し
りょう・ほ・かん・こ、
“機密資料保管庫”!?』
胸中で復誦してみてよう
やく認識したのか、弥嘉
は驚きのあまり暫し目を
瞬かせていた。
『これは……行ってみる
しかありませんね』
そう思うや否や、弥嘉は
生徒手帳の館内案内図の
ページを開きそこに例の
場所を書き込んだ。
それが終わると、弥嘉は
その場をあとにした。


