暫くしても壱加が戻って
こない為、流石に心配に
なった弥嘉は近くにいた
紗奈恵に問いかけた。
「――あれから壱加見て
ませんよね?」
「そうね……いくらなん
でも遅すぎだわ」
紗奈恵は、眉間にシワを
寄せいかにも深刻そうな
顔をしていた。
ジリーーーーーーーーン
華やかな宴の雰囲気を、
一気にぶち壊すかの如く
けたたましいサイレンが
突如鳴り響いた。
その瞬間、会場内が騒然
とした雰囲気になった。
「火災警報機が発動しま
した。生徒及び教師らは
速やかに船から降り避難
してください。尚、出火
元は1階男子トイレです」
実に機械的なアナウンス
を耳にした途端、弥嘉は
その場に崩れ落ちた。
『壱加っ!?どうして?』
弥嘉がそう思うや否や、
涙が彼女の頬を伝った。


