先程の一言により状況は
益々悪化していった。
しかし既に混乱していた
弥嘉はそれに気付かずに
尚も口を開いた。
「あと、先程壱加様から
羽根が出てきた気がする
のですがマジシャンでも
されているのですか?」
「はっ!?アンタ羽根まで
見えたのかよ!?」
「……ひいっ!!」
驚く弥嘉に構うことなく
壱加は彼女の後方にある
三面鏡へ視線を動かす。
するとすぐに彼は早足で
そこへ向かい自身の体を
隅々まで眺め始めた。
『羽根はしまってあるし
目も漆黒……だよな!?』
壱加は、慌てて男の元に
駆け寄るなり彼の右腕を
掴み鏡の前に立たせた。
そして、先程までの態度
とは一変し弱々しい声で
男に訊ねた。
「徹……今の俺から羽根
とか見えるか?あと目は
碧色に見えるか?」
「…………見えないな」
男は目を見開いて戸惑い
ながらも彼に返答した。


