「……ところで壱加様?
何故、誘拐される羽目に
なったのですか?確か、
あの学校のセキュリティ
はこの国で1,2位を争う
程に万全だそうですが」
ようやく落ち着きを取り
戻した弥嘉は、表面上は
穏やかな口調で訊ねた。
その瞬間、壱加は大量の
冷や汗を流して意図的に
彼女から目線を逸らす。
「あの……えっと……」
「これだけの方にご迷惑
をかけた以上、当然説明
責任はありますよね?」
弥嘉は尚も笑みを絶やさ
なかったが、瞳には威圧
感を漂わせていた。
それに観念した壱加は、
少しずつ口を開いた。
「えっと……前に徹から
“弥嘉が行くから壱加も
帝政律館に行きなさい”
とか言われたけど、別に
守護者でもねぇのに何で
わざわざそんなとこ行く
のか全く意味が分かんな
くて……まぁ、徹が言う
には“守護者が側にいる
から安心だろう”ってな
わけだったらしいけど、
言っちゃ難だがぱっと見
お前は頼りにならなさそ
うだったから、それなら
徹の所に居たほうがまだ
マシかと思って」
「――学校から逃げ出し
たのですね?」
それを耳にした弥嘉は、
思わず溜め息を漏らす。
それに罪悪感を覚えつつ
壱加は話を続けた。
「あと、脱走途中に奴ら
が急にぶつかってきて変
にいちゃもんつけてきや
がったから、ムカついて
思わず火ぃ付けたら」
「誘拐されたと……」
弥嘉は、もはや呆れ顔を
隠すこともしなかった。
「とにかく壱加様?」
「――分かってらあっ!!
この度はお騒がせして、
すいませんでした!!」
壱加はそう言うと一同の
目の前で深々と土下座を
やってのけた。
この日を境に守護者達が
“何があろうとも弥嘉を
敵に回してはならない”
ということを肝に銘じた
のは言うまでもない。


