五時半を過ぎた頃の誰もいない下駄箱に俺はぽつりと立っていた。



いつもこの下駄箱は色んな人の色んな上履きの酷い臭いが混ざりに混ざり、異臭を放つ悪臭スポットだ。




でも今の俺はそんな臭いなんてわからなくて、今自分が見ている景色もいつもと違う気がして



一歩、一歩と帰り道へと足を踏み出すたびに心が虚しくなった。



俺の足元の傍らには、寿命の尽きた蝉が転がっていて、抜け殻の俺は深く同情した。


俺も蝉も人間も、大して変わんない。



そう思って、無理矢理笑顔を作ってみると随分と楽になれた気がした。