アパートの階段を上り終えた僕は、ポケットに携帯を突っ込むと、家の鍵を出した

鍵穴に鍵を差し込もうと手を前に出したまま、僕はドアの前に立っている真央を見て驚いた

「真央?」

真央は旅行鞄を二つ持って、僕の顔をまっすぐに見つめていた

「家を出たの。泊めてくれる?」

真央は泣きはらした目で、微笑んだ

どうして…ここにいるんだ?

それになんでそんなに瞼が腫れてるんだよ

三日三晩、泣き続けた…みたいな顔をして…何かあったのか?

いや、僕とは別れたけど、毎日泣き続けるとは思えないし

「真央、家を出たって…どういうこと?」

「追い出されたっていうのかな」

真央がぎこちない笑みを浮かべると、肩を持ち上げた

「頼れる人が、悠真しかいなくて…ごめん。アパートを見つけたら、すぐに出ていくから…それまではここにいさせて」

僕はドアの鍵を開けると、ドアを大きく開けた

真央が先に入る

僕は後から入ると、玄関にカギをかけた

「不倫がね…バレちゃったの。相手の奥さんが、家に来て大暴れしちゃって。何も知らなかった両親もカンカンに怒っちゃって。寂しさを紛らわすために付き合い始めたのに、向こうは違ったみたい。奥さんと別れるから…あたしと別れたくないって頭まで下げられちゃった」

真央がすとんと足の力を抜いて、畳の上に座り込んだ

「おいっ…大丈夫か?」

「ごめっ……。纏められるのもだけかき集めて、逃げてきちゃった」

真央が声をあげて泣きだした

僕が真央の肩にそっと手を乗せると、真央は振り返って僕に抱きついた

「ごめ……さい。あたしがいけないのはわかってるんだけど、悠真にしか頼れなくて。悠真が好き…好きなのっ」

真央、泣くなよ

僕は真央の背中をそっと撫でた