「松浦君、幸せにね」

「ああ。サンキュ」

僕は答えると、桃香ちゃんが手を振った

僕がバイクに跨ると、後ろにさくらが乗ってきた

「さくら、ヘルメット」

僕は、さくらの頭にさくら色のヘルメットかぶせた

「ありがと、センセ」

「さて、と。僕たちの新居に行きますか」

「え? 新居?」

さくらが驚いた声をあげた

「そ。引っ越したんだ。仕事も辞めたよ」

「…なんで?」

「さくらを迎えに行くのに、教師である必要はないだろ?」

「もしかして…パパが?」

僕は首を横に振ると、バイクのエンジンをかけた

「違うよ…僕が教師でいるのが嫌だったんだ。一人の男として、さくらを受け入れたかった。それだけだよ」

「え? なに?」

エンジンの音で、僕の声が聞こえなかったのか

さくらが大きな声で聞き返してきた

僕は、前を向いたまま微笑むと、何も答えずにバイクを走らせた