愛の雫

「す……き……」


あたしが小さく漏らした声が、時計の秒針の音に混じって消えた。


「え……?」


目を見開いた凪兄を見つめたまま、視線が逸らせなくなる。


「希咲……?」


驚きを隠す余裕も無いのか、彼はあたしの様子を窺うようにしながらも、動揺をあらわにしていた。


そうだよね……


こんな事告(イ)われたって、凪兄は困るよね……


だけど、あたしはもう戻れないんだよ……


この気持ちを知らなかった、あの頃には……