愛の雫

泰人の背中を見つめながら、全身の力が抜けていくのがわかった。


「希咲?大丈夫か?」


凪兄は座り込んだあたしの腕を掴みながら、不安げに訊いた。


「う……うん……」


何とか頷いたものの、足に力が入らない。


寒さのせいなのか恐怖心のせいなのか、体がガクガクと震えていた。


凪兄は着ていたコートを脱いであたしの肩に掛けると、両腕を引っ張ってくれた。


次の瞬間、あたしの体は軽々と起こされ、あっという間に彼に抱き上げられていた。