愛の雫

「……希咲がそう言ってるんだし、もうイイよな?」


凪兄は、今にも殴り掛かりそうな泰人を睨んだ。


そんな彼からは、感じた事が無いくらいの威圧感が伝わって来る。


傍で見ていたあたしは、さっきの泰人に感じたのとは全く違う意味で、凪兄を恐いと思った。


泰人もそれを感じたのか凪兄から視線を逸らし、黙ったままのあたしを見た。


「……希咲、今日の事覚えてろよ」


捨て台詞のように言葉を吐いた泰人は、体を強張らせたあたしから視線を逸らして立ち去った。