愛の雫

「……傷、痛む?」


そう訊きながら戸惑いがちに伸びた奈緒ちゃんの手が、あたしの左頬を労るように触れた。


「もう平気だよ」


彼女に心配を掛けないように、小さく笑って見せる。


正直、色んな事があったから傷の事なんて忘れ掛けていたし、あまり痛くないのも事実なんだ。


それでもまだ眉をしかめている奈緒ちゃんに、あたしは微笑んだまま続ける。


「本当に大丈夫だから、そんな顔しないでよ」


彼女は少しだけ不安そうにしながらも、安堵の表情を浮かべた。