愛の雫

『が、ん、ば、れ』


ガラスに隔たれて声は聞こえなかったけど、凪兄は確かにそう言ったんだ。


真っ直ぐな瞳と、いつもの優しい笑顔で…。


不安が和らいだ心が温かくなって、引き攣っていた顔の力が緩む。


あたしの表情から心の中を読んだのか、凪兄がニッコリと笑った。


今まで気付かなかったけど…


凪兄はいつも、あたしの手を引いて進むべき道に誘(イザナ)ってくれる。


あたしはゆっくりと深呼吸をした後、ガラス越しの二人に向かって小さく頷いた。